「頑張っているのに成績が上がらない」、そんな悩みを抱える受験生は少なくありません。授業を増やし、勉強時間を確保しているはずなのに、結果が伴わない。医学部専門予備校・滝原塾の代表である滝原一憲氏は、その原因を「学習設計」と「生徒自身の前提」にあると語ります。7名限定という少人数制で、一年での医学部合格を実現させてきた滝原塾。その指導方法について詳しく伺ってきました。
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- 滝原塾
- 代表
滝原 一憲 氏
なぜ「授業を増やす」だけでは一年内での合格が難しいのか
-多くの予備校では授業数を増やすことで学力向上を図りますが、滝原塾では違うアプローチを取っていると聞きました。
滝原:そうですね。まず誤解のないようにお伝えしたいのですが、授業を受けること自体は悪いことではありません。ただ、授業を「主役」にしてしまうと、学習は進まないんです。
授業を受けた直後は「分かった気」になるんですよ。でも、次の授業までの間に内容が抜けていってしまう。抜けたまま次に進むから、理解が浅いまま積み重なっていく。これが「やっているのに伸びない」状態の正体です。
-なるほど。それは生徒の能力の問題ではないということですか。
滝原:はい、能力ではなく学習設計の問題です。多くの予備校では、朝から夕方まで集団授業を受けて、さらに個別指導を追加で入れる生徒もいて、夜にようやく自習時間が取れるという流れが一般的です。
でも、考えてみてください。その日受けた授業の復習だけでも、6時間あっても足りないことがあります。さらに前日の復習も必要となると、時間が全く追いつかないんです。
-復習の時間が構造的に確保されていないということですね。
滝原:その通りです。授業を増やせば増やすほど、実は「身につけるための時間」が減ってしまう。この構造を変えない限り、どれだけ授業を増やしても一年での合格は難しいと思っています。
医学部合格の主戦場は「自習」にある。
-滝原塾では授業をどのように位置づけているのでしょうか。
滝原:授業は「分からないところだけを解決する」ためのものと考えています。自分で勉強を進めていて、どうしても理解できない部分が出てきたら、そこだけ授業で解決する。逆に言えば、理解できている部分に授業を入れる必要はないんです。
-浪人生はすでに一度学んでいるわけですから、「知っている」はずですよね。それでも合格できないのはなぜでしょうか。
滝原:いい質問ですね。「知っている」と「身についている」は全く違うんです。浪人生の多くは、確かに一度は学んでいます。知識としては「知っている」状態。それでも合格できないのは、その知識が「身についていない」からなんです。
点が取れる状態というのは、知識が「使える」状態になっていること。そこまで持っていくには、自分で手を動かして繰り返し復習する時間が絶対に必要です。それができるのは自習の時間しかありません。
-親御さんの中には「授業が少ないと不安」という方もいらっしゃると思いますが。
滝原:ご安心ください。必要な授業はいくらでも提供します。ただ、授業を主戦場にはしません。自習時間を確保できる設計こそが、一年合格への最短ルートだと考えています。
コーチングが「自習力」を育てる
-自習が大切なのは分かりました。ただ、自習が続かない生徒も多いのではないでしょうか。
滝原:おっしゃる通りです。自習が重要だと分かっていても、それを実行し続けられる受験生は多くありません。ここが一番大事なポイントなんです。
同じ環境で勉強していても、伸びる子と伸びない子がいますよね。その差は、勉強量でも才能でもありません。「自分はやればできる」と思っているかどうか、なんです。この「思い込み(セルフイメージ)」が、学習に向かう姿勢を根本から変えます。
-思い込みが、具体的にどう影響するのでしょうか。
滝原:「どうせ自分には無理だ」という前提で勉強している生徒は、分からない問題に出会ったとき、立ち止まって考える前に手が止まってしまうんです。「また分からない、やっぱり自分はダメだ」と。
逆に「自分はできる」と、セルフイメージの良い生徒は、同じ問題でも粘り方が全く違います。分からなくても「どこが分からないんだろう」と考え続けられる。
例えば、問題集を開いたまま5分手が止まるか、分からないなりに解説を探しに行くか。この小さな差が、積み重なったときに大きな差になります。偏差値40の子は、無意識のうちに偏差値40の行動を取ってしまうんです。頑張っているのに伸びない子の多くが、この状態に陥っています。
-その「前提」を変えるために、コーチングを取り入れているのですね。
滝原:はい。ただ、よくある悩みを聞いたり、勇気づけるコーチングとは違います。私たちのコーチングは「自ら積極的に学ぼうとするモチベーション」を上げ、自習が成功する 土台を作るためのコーチング です。
毎日、生徒と一緒に前日の振り返りをします。目標に対してどうだったか、良かった点も悪かった点も確認する。そして、次に何をすべきかを生徒自身に考えてもらいます。大事なのは、答えを与えないこと。自分で決めた行動だから、続けられるんです。
「自分は変われる」と思えたとき、自習の質が変わります。勉強することが苦じゃなくなって、むしろ「やりたい」という気持ちが自然と湧いてくる。そうなれば、もう放っておいても勉強するようになりますよ。
「7名」だからこそ成立する合格カリキュラム
-滝原塾は7名限定ですが、なぜこの人数なのでしょうか。
滝原:合格から逆算したら、この形しか残らなかったんです。
毎日30分のコーチングをしっかりやろうと思ったら、7名が限界です。しかも、生徒ごとに必要な関わり方が全く違います。特に前半は「自分はやれる」という土台づくりに時間がかかる子もいます。一人ひとりの状態を見て、表情の変化や声のトーンまで気にしながら関わるには、これ以上人数を増やすと難しいんです。
-7名というのは「売り」ではなく、必然なんですね。
滝原:そうなんです。7名は私たちの「売り」ではなくて、この指導を成立させるための前提条件です。これ以上増やすと指導が成立しません。なので、7名という少数に絞って「合格に十分な指導をする」ということを念頭に指導させていただいてます。
-最後に、どんな生徒に来てほしいですか。
滝原:現状の学力は問いません。偏差値40でも構わないです。大事なのは「本気で変わりたい」という意志があるかどうか。
頑張っているのに結果が出ない。そんな子にこそ来てほしいですね。今までのやり方で伸びなかったなら、やり方を変えればいい。私たちは、その変化に本気で向き合います。
医学部合格は、ゴールではなく通過点です。ここで身につけた「自分を変える力」は、医師になってからも、その先の人生でもずっと役に立ちます。そういう力を、一緒に育てていきたいと思っています。
取材を通じて強く感じたのは、滝原塾が「勉強を教える塾」ではないということでした。もちろん、必要な授業は提供されます。でも、それは主役ではありません。
「どうせ自分には無理だ」と思い込んでいる生徒に、いくら良い授業を与えても成果は出ません。まず「自分はやれる」という土台をつくる。そこに時間をかけるからこそ、自習が成立し、知識が定着し、一年での合格が可能になるのだと感じました。
7名限定という選択も印象的でした。拡大すれば売上は伸びるはずです。でも、それでは一人ひとりに向き合えない。滝原氏の「全員を合格させたい」という言葉に、強い覚悟を感じました。
「頑張っているのに伸びない」という経験をしてきた受験生にとって、滝原塾は「最後の砦」になり得る場所になるのではないでしょうか。